冷暗所とは?何を保存すべきかわかりやすく解説

調味料・お酒・レトルト食品など、特に食材関連の保存表示で、よく見かける言葉でもある冷暗所。冷蔵庫でも常温でもなく、わざわざ「冷暗所」と指定されているケースは多くありますよね。そんな当たり前に出てくる冷暗所ですが、実際はどのような場所が当てはまるのか、いまいち理解できていない場合も。そこで今回は、冷暗所について知っておきたい基礎知識や具体的な活用方法などを解説していきます。

冷暗所とは?

冷暗所とは具体的にどのような場所のことでしょうか

そもそも冷暗所とは、その文字どおり、低温かつ暗い場所を指します。もう少し具体的にいうと、感覚としてはひんやり肌寒いくらいの温度感で、太陽光の入らないスペースであれば冷暗所と考えられるでしょう。またジメジメとした湿度の高い場所は、カビや菌などが増殖しやすい一面もあり、保存の意味での冷暗所には適していません。そのため温度・湿度の大きな変化がなく、常に一定の状態を保てる環境であることも、冷暗所の重要な要素です。冷暗所の条件は、次のようにまとめられます。

  • 温度が1度~15度
  • 直射日光が当たらない
  • 風通しがよい(湿気がたまりにくい)

いずれも食品の安全性や品質に関する、法的な定義として定められているわけではなく、あくまで一般的な認識です。なお冷暗所の温度は、医薬品の「品質規格(日本薬局方)」で提示されていることから、広く浸透しています。例えば住宅内なら、外気や日光の影響を受けにくい窓・出入り口からは離れていて、なおかつ水気の少ない場所が冷暗所として活用可能です。
また冷暗所のイメージがもう少しわかりやすくなるように、冷蔵庫や常温との違いも見ていきましょう。

冷暗所と冷蔵庫の違い

冷蔵庫も、直射日光の当たらない冷たい場所として、冷暗所と同じように感じるかもしれません。ですが冷蔵庫は、多くの製品で1度~5度の設定になっているため、冷暗所に比べてより低温なのが大きな違いです。食材関係だと、「温度が低い分には問題ないのでは?」と思えるかもしれませんが、なかには低温保存が適さないモノも。例えば温暖な気候で育つトマト・ナス・ピーマンや、ジャガイモ・玉ねぎといった根菜系などは、冷蔵庫の温度では低すぎて傷みやすくなります。
また湿気によって味や栄養が落ちる食材もあり、冷蔵庫から常温に戻すことで水気(結露)が発生しまうことから、温度の低い保存が向かないケースもあります。冷蔵庫で代用してしまうと、反対に保存が効かなくなる場合もある点は覚えておくとよいでしょう。

冷暗所と常温の違い

常温の定義は、先ほども出てきた「医薬品規格(日本薬局方)」や「食品衛生法」、「日本産業規格(JIS)」で定められています。それぞれで基準は異なりますが、医薬品規格(日本薬局方)・食品衛生法では15度~25度、日本産業規格(JIS)では5度~35度とされています。
前述にもある、冷暗所の条件(1度~15度)に比べると、常温のほうがかなり温度は高めになるのが大きな違いでしょう。こうして考えてみると、常温では「温度が高すぎて腐りやすくなる」などの食品類も出てくる可能性があり、冷暗所のほうが適しているケースも想定されます。

冷暗所に適している場所

ここからは、実際に自宅内にある、冷暗所として使えそうな場所をいくつかご紹介していきます。先ほども出てきたように、冷暗所の条件は、「1度~15度の温度を保てる」「直射日光を避けられる」「湿気がこもらない」の3つがポイント。そのため家の中では、北側のスペースのほうが、涼しい温度を維持する冷暗所として最適です。なお冷暗所の具体例としては、次のような場所があります。

床下収納

床下収納も冷暗所に向いているスペースの一つです

床下収納は、直射日光が当たらずに涼しい温度を保ちやすく、冷暗所にも使いやすいスペースです。また冷気が下のほうに溜まりやすい特性もあり、比較的低めの温度を維持しやすい特徴もあります。ただし床下収納は、風を通しにくいうえに、キッチンなどの水回りの近くに設置されている場合も多い点には注意が必要。湿気を取り除く乾燥材や除湿剤を使うか、調味料やレトルト食品などの保管庫にするのが無難でしょう。

玄関・ベランダの日陰

直射日光の当たらない、日陰がある玄関やベランダなら、冷暗所に適した環境といえます。特にベランダは、風が通りやすく湿気がたまりにくいので、きちんと日陰さえつくれば冷暗所として十分に活用できるでしょう。ただし玄関もベランダも、外気の影響を受けやすいので、夏場では高温になりすぎてしまうのが難点。秋から冬の季節限定の冷暗所に使うのが安全です。

階段下のスペース

特に一戸建て住宅に見られる、階段下のスペースを使った収納も、冷暗所に活用しやすい場所です。前述の床下収納と似たようなイメージで、日光が入りにくく冷気を集めやすいため、冷暗所には適した環境でしょう。ただし床下収納と同様に、風を通しにくかったり水場が近かったりする場合には、湿気対策をしたうえで冷暗所として使うほうが安心です。

冷蔵庫の野菜室

冷蔵庫の冷蔵室ではなく、野菜室であれば大体5度~8度の高めの温度設定になっているので、冷暗所の代わりに使うことも可能です。扉を閉めれば光は入りませんし、一定の冷たい温度に維持できるため、冷暗所には最適。ただし基本的には、冷蔵保存用の野菜向けに設けられているもので、鮮度の関係から湿度も高めになっています。湿気に弱い食品類などは避けて、冷暗所として活用するのが無難でしょう。

納戸

廊下などに設置されている納戸も、直射日光を避けやすく、冷暗所に向いているスペースです。特に窓や玄関から離れていると、外気の影響も受けにくいので、比較的涼しい温度に保ちやすい一面もあります。ただしこちらも床下収納や階段下スペースと同じく、風通しや湿気に心配があるケースもあるため、十分な湿度対策をして活用するのがおすすめです。

冷暗所に適していない場所

冷暗所に向いていないのは、今までに出てきた特徴とは反対に、「温度変化が激しい」「直射日光が当たる」「湿気が高くジメジメしている」というような場所です。では家の中で想定してみると、具体的にどのようなスペースなのか、以下から見ていきましょう。

シンク下の収納部分

シンク下の収納は、直射日光を遮る意味では冷暗所に適していそうですが、排水管が通っていて湿度が高くなりやすい場所です。風通しが悪いうえに水場が近いため、湿気がこもりやすい難点があります。さらにガスコンロなどの放熱の影響も受けやすく、温度変化もしやすいので、冷暗所にするのは避けたほうが無難です。

倉庫・ガレージ

倉庫やガレージは、屋外にあるので風通しもよく、直射日光も避けられる点では冷暗所に適しているようにも感じるかもしれません。ただし倉庫やガレージは、外気の影響を直接的に受けてしまうので、温度変化が激しく冷暗所には適さないでしょう。食品類などの保管には、使わないほうが安全です。

冷暗所で保存すべき食品

冷暗所での保存が向いている食品を確認しましょう

食品表示ラベルなどで、冷暗所での保存を推奨されている際には、当然ながらそれに従うのがベストです。またその他にも、あえて指定はされていないものの、冷暗所で保存したほうがいい食品はいくつかあります。ではどのような食品が冷暗所に適しているのか、詳しくご紹介していきます。

お米

お米は、温度や湿度が高い場所に置いておくと、虫が付いてしまう食品でもあります。また高温多湿によって風味が落ちてしまうこともあるため、お米は風通しがよくて涼しい冷暗所での保存が最適。お米も生鮮食品の一つなので、なるべく鮮度を維持して味を守るには、冷暗所で保存するのがおすすめです。

小麦粉など粉類

小麦粉・パン粉・片栗粉・ホットケーキミックスなどの粉類も、お米と同じく温度や湿度が高いと、虫やカビが発生しやすいです。また高温多湿の場所に置いておくと、粉類に含まれる成分が傷んでしまいやすい特徴も。粉類も、ひんやりとした湿気のこもらない冷暗所での保存が適しています。ちなみに粉類は、カビやダニの繁殖を防ぐためにも、密閉容器に入れ替えて保存するようにしましょう。

ジャガイモ・玉ねぎなどの野菜

先ほども少し触れたように、特にジャガイモや玉ねぎなどの根菜類や、トマト・ナス・ピーマンといった夏野菜系は、低温保存が向いていないので冷暗所がおすすめです。またジャガイモは、光が当たると表皮が変色したり芽が出たりするうえに、低温で傷んでしまう一面があります。他にも玉ねぎは、高温多湿によって風味や品質が落ちやすいため、冷暗所が最適。
夏野菜系も、温度の低さで劣化が進みやすい部分があり、冷暗所で保存したほうが長持ちしやすくなります。いずれも新聞紙やキッチンペーパーに包んで、カゴなどにまとめて冷暗所に置いておくのが一般的な保存方法です。

お酒

お酒は、温度変化や紫外線によって、風味が悪くなってしまう特徴があります。また高い温度も苦手なので、涼しい冷暗所に保存しましょう。冷暗所に置くことで、香りや味が変わってしまうことを防げ、比較的長く、おいしく味わえます。

食用油

サラダ油やオリーブオイルなどの食用油は、紫外線などの光や高温にさられると、酸化して品質が落ちてしまいます。食用油が劣化すると健康にもあまりよくないので、暗く涼しい冷暗所に保存するのがベストです。ちなみに冷蔵庫ほどの温度の低さになっても、固まって使えなくなってしまうので、適度な低温の冷暗所にストックするのがよいでしょう。

乾麺

パスタやそうめんなどの乾麺は、湿気がカビや劣化の原因になるうえに、熱や光にもあまり強くありません。特に湿気には弱く、常温に戻した時に水気が発生してしまうと悪影響になるので、冷蔵庫での保存も難しい食品です。そのためパスタやそうめんなどの乾麺も、風通しがよく、直射日光や高温を避けられる冷暗所で保存しましょう。

冷暗所で保存する時の注意点

安全に食品を保存するには、ただ冷暗所に置いておくだけでは不十分です。しっかりと味や品質を長持ちさせるには、以下のような点にも注意して、適切に管理するようにしましょう。

衛生管理に気を付ける

冷暗所では、温度・湿度・暗さなどの条件は揃っていますが、衛生面は人の手によって管理する必要があります。例えばホコリやゴミが溜まらないように定期的に掃除をしたり、害虫が出ないように食品的に安全な虫除け対策をしたりなど。いつでも清潔に保てるようにお手入れすることも欠かせません。また食品類は基本的に消費期限・賞味期限があるので、計画的に使えるように、こまめにチェックしておくようにしましょう。

温度と湿度を安定させる

冷暗所は、常に一定の温度と湿度にしておくことで、食品の保存に適した環境になります。特に気候の厳しい夏場は、たとえ室内でも温度や湿度は変化しやすくなるので注意が必要。温度や湿度が安定するように、例えばサーキュレーターを置いて涼しくする・乾燥剤を置くなど、状況に応じて工夫していくことも重要です。

暖かい場所や直射日光があたる場所は避ける

今までに見てきたように、冷暗所に使うスペースとして、高温や光の影響を受けやすい場所は適していません。例えばガスコンロや家電の近くなどは、熱が伝わって温度が上がってしまう可能性があります。またどうしても直射日光や蛍光灯の明かりが入りやすい場合には、新聞で光を遮ったり、ダンボールで囲ったりなどの対策をしましょう。

冷暗所がない時の対処法

なかなか自宅で冷暗所に適した場所がない時には、自作してみるのも一つの方法です。冷暗所に必要な条件さえ揃えれば、食品の保存ができる環境を整えるのは難しくありません。ではここからは、ちょっとしたスペースを使って、簡易的な冷暗所を作る方法をご紹介していきます。

ダンボールを活用する

冷暗所がない時は、ダンボールで代替することも可能です自宅の廊下など、比較的涼しくて温度が安定しやすい場所に、ダンボールを使って冷暗所を作る方法もあります。ダンボールの中に新聞紙を敷いておけば、湿気も吸ってくれるので、湿度も一定に保てる冷暗所にすることが可能。さらにフタをすれば、直射日光なども避けられて、手軽に冷暗所を設置できます。

発泡スチロールを活用する

断熱性の高い発泡スチロールも、簡易的な冷暗所を作るのにおすすめ。側面や天面などに小さな穴を開けておけば、湿気も溜まりにくいうえに、きちんと涼しくて暗い冷暗所にできます。また気温が高くなる夏場には、保冷剤や扇風機などを使って温度を下げるように工夫すれば、問題なく冷暗所として活用できるでしょう。

クーラーボックスを活用する

クーラーボックスは、屋外でも使える保冷アイテムで、当然ながら室内でも活用できます。中に保冷剤を入れておけば涼しくできますし、フタを少しだけ開けておくと、きちんと風も通る冷暗所として使うことが可能です。

冷暗所についてよくある質問

最後に、冷暗所の特徴や使い方などで疑問になりやすい部分について、簡単にQ&A方式で整理していきます。

冷暗所は何度ぐらい?

冷暗所の温度の目安は、1度~15度程度。常に一定の涼しい温度を維持できる場所を、冷暗所といいます。その他の条件としては、直射日光の当たらない暗さと、風通しのよさが挙げられます。

冷暗所は家のどこ?

一般家庭で冷暗所として活用しやすいのは、床下収納・玄関やベランダの日陰・階段下スペース・納戸など。いずれも直射日光が当たりづらいスペースで、なおかつ外気の影響を受けにくく涼しい場所です。また風を通しやすいスペースも、湿気がこもりにくいため冷暗所に適しています。冷暗所としては、暗さ・温度の低さ・湿気の逃げやすさの3つが揃っている必要があり、特に家の北側で探してみるのがおすすめです。

冷蔵庫を冷暗所としてもいい?

基本的に冷蔵庫は、冷暗所よりも設定温度がかなり低めになっています。食品のなかには、低温すぎる場所での保存が向かないものもあるので、冷蔵庫を冷暗所代わりに使うのは難しいケースも。冷暗所の適度に涼しい温度感でないと、品質などが落ちやすい食品もあるので、冷蔵庫で代用するのは避けたほうが無難でしょう。ただし冷蔵庫の野菜室に限っては、冷暗所に近い温度設定になっているため、食品によっては代用できるケースもあります。

パントリーは冷暗所?

パントリーはキッチンに付随して設置される収納スペースで、必要な条件さえ揃っていれば、冷暗所として活用できます。日光が入りにくい暗さがあり、涼しい温度と湿気がこもらない風の通り道があれば冷暗所として問題ないでしょう。ただし居住スペースに近い分、十分な温度・湿度管理が欠かせない点には注意が必要です。

まとめ

どのような場所が冷暗所に向いているか。冷暗所で保存すべきものについて紹介しました冷暗所は、ひんやりとした風の通る暗い保存スペースで、例えばお米・粉類・根菜・お酒・食用油・乾麺などを置いておくのに適しています。直射日光が当たらずに、なおかつ湿気が逃げやすく涼しければ、自宅の冷暗所として十分に活用できます。ただしきちんと保存の効く冷暗所として使うには、こまめなお手入れや温度・湿度管理などは必須。安心・安全に食品を使えるように、状況に合わせて工夫しながら冷暗所を使っていくことも重要です。ぜひ本記事を参考に、食品の適切な保存に向けて、自宅の冷暗所を上手に活用していきましょう。