所有している家を手放すには、「売る」方法も選択肢の一つです。しかし、初めての家の売却では、何をどうすればいいかわからないという方も少なくありません。全体の流れを把握してスムーズに進められれば、売主にとって好条件で家を売ることができます。
そこで本記事では、家を売る方法や基本的な流れ、必要書類、注意点などを解説します。将来的に家を売ることを考えている方や、家を売る方法について把握しておきたい方はぜひ参考にしてください。
家を売りたい!まず何から始めればいい?
家を売りたいと考えたら、まずは情報収集から始めましょう。家を売るには売主の希望条件と相場に大きなズレがないよう、バランスを考える必要があります。また、家を売るタイミングも重要なので、事前に準備できることから始めなければなりません。事前に把握しておきたい情報は、以下のとおりです。
- 住宅ローンの残高を確認する
- 売却相場を調べる
- 売却の希望額を明確にしておく
- 書類の準備を始める
住宅ローンを利用して家を購入している場合は住宅ローン完済の必要があるため、残高を確認しましょう。売却金額を設定する際に一つの基準になります。次に、売却相場を調べて売却金額が相場と大きくズレないように注意しましょう。相場とのズレは販売活動をおこなう期間に影響しやすく、スムーズに売却できるかが変わります。ローン残高や相場を確認したうえで、売却希望額を明確にしておきましょう。希望額は上限と下限を設定しておくとよりスムーズです。
さらに、売却時に必要な書類をあらかじめ確認しておいてください。取得に時間がかかる書類が出てくる可能性もあるので、早めに準備しておくことをおすすめします。
家を売る方法には「仲介」と「買取」がある
家を売る方法として、「仲介」と「買取」の2種類があります。不動産会社を介さない「個人売買」もありますが、トラブルに発展しやすいため一般的な方法ではありません。以下では、「仲介」と「買取」の方法について解説します。
仲介
仲介は、売主と買主の間に不動産会社が入って売買取引をおこなう方法です。仲介する不動産会社が依頼を受けた物件の販売活動をおこない、買主を探します。契約書の作成、買主とのやり取りなどすべて不動産会社が対応してくれるため、安心かつスムーズな取引が可能です。
買取
一方、買取は不動産会社が買主となって直接買い取る方法のことをいいます。仲介業務で発生する販売活動を省くことになるため、確実に売却可能なうえ圧倒的に時間短縮が可能です。不動産会社は物件を購入後、リフォーム等をおこない再販売することがほとんどなので、買取金額は相場より低くなる傾向にあります。
仲介 | 買取 | |
売る相手 | 不動産会社が買い手を探す | 不動産会社に直接売る |
仲介手数料 | かかる | かからない |
売却期間 | 時間がかかる | 即時 |
売却金額 | 買取より高い傾向 | 仲介より安い傾向 (仲介の7~8割程度) |
仲介と買取の特徴をまとめました。自分に合った売却方法を選択しましょう
また一般的ではないですが、上記の仲介と買取以外に「個人売買」で家を売ることも可能です。個人売買は売主と買主の間に不動産会社を介さず、個人の売主と買主のみで売買取引をおこないます。仲介手数料が発生しないため諸費用を抑えることはできますが、契約書類の作成など専門的な知識が必要です。そのため、初めて家を売る方にとっては少々ハードルが高い方法といえるでしょう。
高く売りたいなら「仲介」、早く売りたいなら「買取」がおすすめ
仲介と買取を選ぶ際は、売却希望条件の優先順位の高いポイントを決めておくことをおすすめします。住み替えによる売却で、期間に余裕があり高い金額での成約を優先したい場合は仲介、事情がありまとまった現金が必要になるなど、スピード重視で売却したい場合は買取を選択するとよいでしょう。
家が売れるまでどれくらいかかる?
家を売るのにかかる販売期間は仲介で3~6カ月程度、買取で2週間~1カ月程度かかるのが一般的です。事前準備から査定、契約・決済までのトータルかかる期間であれば、仲介は6~8カ月程度、買取は1~2カ月程度見ておくとよいでしょう。
家を売りやすい時期や条件は?節税に効果的なのはどのタイミング?
上述のとおり、家を売るのにはタイミングが重要です。適切なタイミングを見極めると家が売れやすくなるほか、節税にも効果があります。以下で家を売りやすい時期や条件について解説します。
【時期】1~3月がもっとも売りやすい
1年の中で家が売れやすい時期は、不動産市場の繁忙期である1~3月頃です。特に3月は進学、転勤などライフステージの変化にともない、住み替えが多くなる時期に差し掛かります。家を売る際は繁忙期で販売活動ができるよう、余裕を持って11~12月頃から準備を始めておくと安心です。
【築年数】築浅物件ほど売りやすい
建物は築浅であるほど売りやすい傾向にあります。また、築年数はマンションか一戸建てか、構造などによっても異なるため、以下でマンションと一戸建ての場合の売れやすい築年数を紹介します。
マンションの場合は築25年以内
マンションの場合、築25年以内で売るのがおすすめです。一般的にマンションの構造は鉄筋コンクリート造であることが多く、木造の一戸建てと比べて法定耐用年数は長めです。その分、売りやすい期間も長くなります。築25年を超えると、販売に時間がかかりやすくなるため注意しましょう。
一戸建ての場合は築20年以内
一戸建ての場合は築20年以内で売ることをおすすめします。木造の一戸建てはマンションよりも建物の劣化が進みやすく、築20年を超えると大幅なリフォームや建て替えが必要になることも考えられます。買主にとって、購入費用に加えてリフォーム費用がかかるのは大きな出費です。修繕費用を抑えられる築20年以内のうちに売るようにしましょう。
【税金】節税するなら購入から5年・10年超えを狙う
譲渡所得の区分 | 所有期間 | 税率 (住民税・復興特別所得税込み) |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超え | 20.32% |
家の所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」になり、税率がかなり軽減されることがわかります
また、所有期間が5年を超えると譲渡所得税の税率が変わるため、節税効果を得るには所有期間6年目以降に売るのがおすすめです。所有期間10年超えの場合、さらなる節税効果が期待できます。譲渡所得が6,000万円以下の部分の税率が14.21%となるほか、3,000万円特別控除の特例と併用可能です。
家を売る際の流れと手順は?
ここからは、家を売るときの基本的な流れや手順をご紹介します。仲介によって家を売る場合のステップや、ステップごとにかかる期間は以下のとおりです。
ステップ | かかる期間 |
---|---|
不動産会社に相談・査定依頼をする | 約1カ月 |
不動産会社を選定し媒介契約を結ぶ | |
家を売り出す | 約1~3カ月 |
売買契約を結ぶ | |
決済・不動産の引渡しをする | 約1カ月 |
確定申告をする | 売却の翌年 |
家を売るための基本的な流れです。順番に詳しく見ていきましょう
STEP1: 不動産会社に相談・査定依頼をする
まずは、不動産会社に売却に関して相談することから始めます。売却に関する基本的な流れや不安な点を確認しておきましょう。また、同時に査定を依頼することも可能です。査定方法としては以下の2種類があります。
机上査定
机上査定は、現地調査をせずに物件情報などのデータをもとに価格を算出する方法です。簡易査定ともいわれており、住所や面積などの物件情報に加えて類似物件の成約事例などから算出します。
訪問査定
訪問査定は机上査定のデータを参考とし、実際に現地調査を行って価格を算出する方法です。データだけではわからない部分が見られるため、机上査定よりも具体的な査定価格を出すことができます。
STEP2: 不動産会社を選定し媒介契約を結ぶ
査定内容や対応などから判断し、売却を依頼する不動産会社を選びます。販売活動を始める前に、不動産会社と媒介契約を締結するのが一般的です。媒介契約には、以下のように3種類あります。
専任媒介契約
専任媒介契約は、売主が不動産会社を一社に絞って依頼する媒介契約です。重複してほかの不動産会社と媒介契約を結ぶことはできません。ただし、売主は自分で買主を探す自己発見取引は可能です。売主は一社に売却を依頼するため、不動産会社選びが重要です。ただし、専任媒介契約を結ぶと積極的に販売活動をしてもらえます。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様に依頼する不動産会社を一社に絞り、さらに自己発見取引ができない媒介契約です。依頼した不動産会社に全面的に任せることになるため、慎重に不動産会社を選定する必要があります。
一般媒介契約
一般媒介契約は、複数の不動産会社に売却を依頼できる契約です。専任媒介契約や専属専任媒介契約よりも制限が少なく、比較的自由に販売活動ができます。売主にとって自由度が高い媒介契約ですが、販売活動の報告義務が任意であることから、活動内容がわかりづらい傾向にあります。
STEP3: 家を売り出す
不動産会社と媒介契約を締結後、販売活動が始まります。主な活動はインターネットへの広告掲載、店頭での紹介、チラシの投函などです。売出価格は査定金額や周辺相場をもとに、売主で決めることができます。あまり高く設定しすぎると売りづらくなるので、適正価格を設定するようにしましょう。前述しましたが、家が売れるまでは3~6カ月程度かかります。
STEP4: 売買契約を結ぶ
買主が決まったら売買契約を結びます。売買契約を締結する前に、条件のすり合わせが必要です。値引き交渉が入る可能性があるほか、契約日・引き渡し時期などの交渉をおこないます。売買契約時は契約書の取り交わしと同時に、売買代金の一部を手付金として受け取ることが可能です。
STEP5: 決済・家を引き渡す
売買契約締結後、決済・家の引き渡しをおこないます。固定資産税などの清算金、契約時に受け取った手付金を除く売買価格の残代金を受け取りましょう。金銭の授受が完了したのちに、家の鍵や必要書類等を引き渡して完了です。
STEP6: 確定申告をする
売却して利益が出た場合、家の引き渡しが完了した次の年に確定申告をする必要があります。利益がなければ確定申告は必須ではありませんが、節税のために確定申告をしたほうがいいケースもあるため確認してみましょう。
家を売るのにかかる費用と手数料は?
家を売る際、以下のような費用がかかります。
- 仲介手数料
- 登記費用(司法書士報酬)
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
仲介手数料
仲介手数料は、取引価格に応じて支払う手数料が異なります。取引価格が400万円以上の場合、「取引価格×3%+6万円(税別)」の計算式で算出可能です。3,000万円の物件であれば、仲介手数料は100万円程度です。
登記費用(司法書士報酬)
登記費用は、抵当権抹消登記にかかる費用に司法書士報酬が含まれます。抵当権抹消登記は不動産1件につき1,000円、司法書士報酬は1万円~1万5,000円程度です。
印紙税
印紙税は売買契約書や領収書に貼り付ける印紙代のことで、契約書等に記載する金額によって納める金額が異なります。売買契約書の印紙税は5,000~3万円程度、領収書の印紙税は200~1万円程度かかるのが一般的です。
譲渡所得税
譲渡所得税は売却後の利益にかかる税金で、住民税や所得税のことをいいます。譲渡所得に対して一定の税率をかけて算出されますが、最高3,000万円の特別控除を受けられます。
売却時にかかる費用は家の条件や売り方などによっても異なりますが、トータル物件価格の4%程度かかるのが一般的です。売買代金を受領する前に支払いが必要なものもあるため、事前にいくらくらいかかるかを確認し、準備しておきましょう。
家を売るのに必要な書類は?
家を売る際、契約・決済時などに準備しておく書類があります。さまざまな種類の書類が必要になるため、以下で確認してみてください。
名称 | マンション | 一戸建て | 土地 | |
---|---|---|---|---|
☐ | 登記簿謄本または登記事項証明書 | ○ | ○ | ○ |
☐ | 登記済権利証 (または登記識別情報通知書) |
△ | △ | △ |
☐ | 物件購入時の売買契約書 | △ | △ | △ |
☐ | 物件購入時の重要事項説明書 | △ | △ | △ |
☐ | 固定資産税評価証明書 (または固定資産税納税通知書) |
△ | △ | △ |
☐ | 土地測量図・境界確認書 | ― | ○ | ○ |
☐ | 公図 | ― | △ | △ |
☐ | 物件の図面 | △ | △ | △ |
☐ | 設備の仕様書 | △ | △ | ― |
☐ | 建築確認済証および検査済証 | △ | △ | ― |
☐ | 建築設計図書・工事記録書 | △ | △ | ― |
☐ | マンションの管理規約または使用細則 | ○ | ― | ― |
☐ | マンションのパンフレット (間取り図などが分かるもの) |
△ | ― | ― |
☐ | マンション維持費関連書類 | ○ | ― | ― |
☐ | 耐震診断報告書 | △ | ― | ― |
☐ | アスベスト使用調査報告書 | △ | △ | ― |
上記のような必要書類は、売買対象となる不動産の種類によって異なるほか、準備するタイミングが違います。役所等でいつでも取得できる書類から、紛失した場合に再発行までに時間がかかるものまでさまざまあるため、必要書類は事前に確認したうえで準備しておきましょう。
詳しくは下記記事で解説していますのでご覧ください。
家を売る際の注意点
家を売る際には、いくつか注意すべき点があります。下記で詳しく解説します。
住宅ローンが完済できるか確認する
まずは、売却によって住宅ローンが完済できるか確認しておきましょう。住宅ローンを完済しなければ、所有権移転(物件の引き渡し)ができません。査定時にローン残高を確認し、完済できる金額を売却価格として設定する必要があります。
売却査定は複数社に依頼する
査定の際は、はじめから一社に絞らず複数社に依頼するようにしましょう。複数社で査定を受けることによって、売却価格が適切か判断しやすくなります。少なくとも、2~3社に査定を依頼して比較することをおすすめします。査定を依頼する前に、売主自身でも相場を把握しておくとよいでしょう。
信頼できる不動産会社を選択する
大きな金額の取引となる不動産売買では、信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。複数の不動産会社と相談し、売却実績や得意エリア、担当者との相性なども含めて総合的に判断するようにしましょう。
不動産の瑕疵(欠陥)は必ず告知する
不動産の欠陥や不具合などの瑕疵(かし)は、必ず不動産会社や買主に告知しなければなりません。売却後に契約内容にない瑕疵が見つかった場合、契約解除や修繕、損害賠償の責任を負う必要があります。あとでトラブルに発展しないよう、隠さず伝えるようにしましょう。
税控除の特例を調べる
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税を納める必要があります。一定の要件を満たせば税控除の特例を受けられる可能性があるので、あらかじめ調べておきましょう。
【ケース別】こんな家でも売れる?
家が売れるか、早く売れるようにするためにどうすればいいかなどを考えるだけでなく、「どう売ればよいか」を考える必要があります。ここからは、家を売る工夫についてケース別にご紹介します。
住宅ローンが残っている家
住宅ローンが残っている家は、完済して売却しなければなりません。売買代金によって完済できない場合は、手持ち資金から不足分を支払うか、新たにローンを組む方法があります。ローンを組む際は、余裕のある返済計画をしっかり立てておくようにしましょう。
古い家
築年数の古い家を売る場合、築浅の家と比べて売却しづらい可能性があります。更地にして土地売りしたり、不動産会社に買い取ってもらったり、リフォームして販売したりするなど、必要に応じて売却方法を考えましょう。
損傷のある家
古い家とも似ていますが、老朽化が進んでシロアリ被害が出ていたり、雨漏りがあったりする家の売却を検討することもあるでしょう。壁紙が剥がれていたり床がボロボロの状態になっていたりする場合は、部分的に修繕をおこなうことで相場に近い金額で売却できる可能性があります。そのまま売却したい場合は買取だとスムーズです。
こだわりの強い間取り・デザインの家
こだわりの強い間取りやデザインの家は、需要が偏りがちです。広いニーズを満たさない可能性があるので、販売期間を長めに考えておき、アピールポイントを不動産会社にも伝えて積極的に販売活動に活かしてもらうようにしましょう。
空き家
近年、古い空き家をリノベーションして住むニーズが増えつつあります。人が住まない家は傷みやすく、空き家を放置するとさまざまなリスクがあり危険です。そのまま売却するか、解体して更地で売却するのもよいでしょう。自治体によっては解体費用の助成制度を受けられる可能性があるので、確認してみてください。
まとめ
家を売るにあたって、改めて確認しておきたい点をまとめました。
家を売るには何から始めればいい?
家を売る際は、情報収集から始めましょう。住宅ローンの残高を確認し、売却相場を調べて相場を把握する必要があります。相場をもとに売却金額の希望を明確にしたうえで、必要書類を準備しておくことが大切です。
家を売る方法は?
「買取」や「仲介」によって家を売るのが一般的です。不動産会社を介さない個人売買もありますが、契約書類の作成など専門知識が必要になるほか、トラブルに発展する可能性があるためおすすめしません。高く売却したいなら仲介、スピード重視なら買取の方法で売るのがよいでしょう。
家を売る基本的な流れは?
一般的な仲介によって家を売る場合、まずは不動産会社に相談・査定を依頼します。仲介を依頼する不動産会社を選んだら媒介契約を結びましょう。販売活動をおこない買主が見つかったら売買契約を締結し、決済・引き渡しをおこない完了です。売却益が出たら確定申告も忘れずにおこないましょう。
今回は、家を売るときの方法や基本的な流れ、注意点などを解説しました。高額な不動産の取引は、トラブルに発展しないよう慎重におこなう必要があります。売主の希望条件に近い形で売却できるよう、信頼できる不動産会社に相談してみましょう。
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