梅雨時期に感じる体調不良は低気圧が原因?

低気圧とは

低気圧が近づいてくると頭痛やめまい、身体のだるさやむくみなどの不調が現れることがあります。
スポーツ選手などでは古傷が痛むなんてこともよく耳にします。なぜ低気圧で人は体調不良を起こすのでしょうか?
まずは低気圧とは何かから詳しく解説していきます。

低気圧の定義

低気圧とは気圧が周囲と比較して低い場所であり、閉じた等圧線で囲まれたところをさします。
そのため、気圧の値が、ある一定の値より低いからと言ってすべてが低気圧であるというわけではありません。
低気圧の中では、北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに風が吹き込みます。これによって中心部では空気の上昇気流が発生し、雲や雨が発生しやすくなります。つまり、低気圧の中では天気が崩れることが多いと言うわけです。
低気圧には大きく分けて温帯低気圧熱帯低気圧寒冷低気圧の3つの種類がありますが、通常「低気圧」という場合は温帯低気圧のことを指します。
温帯低気圧は他の2つに比べて発生頻度が高いことが特徴です。

低気圧のメカニズム

低気圧発生のメカニズムは上昇気流が原因となります。
原因となる上昇気流が発生すると、この上昇気流によって、その地面付近の空気が周りより少し薄くなります。すると周囲の空気が中心に向かって流れ込み始めます。
この流れ込む空気が次の上昇気流を生み出し、さらに地面付近の空気を薄めていきます。
つまり、初期のわずかな上昇気流がキッカケとなって、空気の循環が生まれます。これが低気圧の中心部で起こっていることです。
空気が上昇すると地面の気圧が下がるため、この循環の中心では周囲と比べて気圧が低くなります。そのためこの現象を低気圧と呼んでいるわけです。

気圧と身体の関係

低気圧のとき、なぜ体調が悪くなるのか? そのカギを握るのが「内耳」です。
内耳は耳の奥深くにあり、音だけでなく気圧の変化の情報なども脳に伝えている大切な器官です。ここにあるセンサーが気圧の変化を敏感に感知するのです。
気圧変化で内耳のセンサーが過剰に反応すると、自律神経のバランスが崩れます
同様に、温度や湿度の変化も体中にあるさまざまなセンサーで検知され、自律神経にストレスを与えます。その結果、体調不良を感じることになります。
このように気圧や温度、湿度といった外的要因の変化が、内耳や体内のセンサーを介して自律神経や体調に影響を及ぼすのです。気象条件と健康は深い関係があることがうかがえます。

このように体の内部環境を調整しているのが自律神経になります。自律神経には興奮性の交感神経と抑制性の副交感神経があり、普段はバランスを保っています。
しかし気圧の下がる低気圧時などは、体内の血管拡張といった変化に交感神経が反応しようとします。本来ならば副交感神経がその過剰反応を抑えるはずですが、ストレス社会の現代では自律神経のバランスが崩れがちです。その結果、交感神経の反応が大きくなり、体調不良の症状が出てくるのです。
気圧や気象の変化が体調不良を引き起こす背景には、自律神経の乱れがあります。日頃からリラックスしストレスをため込まないこと。さらに気圧変化を把握して準備することが、体調管理には重要だと言えそうです。

低気圧不調の症状

低気圧時に起こりやすい体調不良の症状を見ていきましょう。

片頭痛

脈打つような強い頭痛を感じるのが特徴で、気圧変化で脳の血管が異常に拡張することが原因です。
血管の拡張で痛みを伝える神経が刺激され、さらに血管拡張が進む悪循環がおこります。気圧変化に敏感な人ほど片頭痛が起きやすく、女性に多い傾向にあります。

めまい・耳鳴り

内耳のバランス感覚をつかさどる三半規管が気圧変化の影響を受けます。するとふらつきや回転感、耳鳴りといった症状が出ます。
特にメニエール病は内耳の異常が原因で発症するめまい病で、発作的に激しいめまいと耳鳴りが襲ってきます。

気管支喘息

気道が収縮して呼吸困難になったり、強い咳が出たりします。花粉症などのアレルギーがある人ほど気圧変化の影響を受けやすい傾向にあります。

関節リウマチ

低気圧時には関節の炎症や痛みが悪化する傾向にあります。症状の悪化は3日前の気圧と連動している為要注意です。

神経痛

事故などの古傷や、帯状疱疹後神経痛などが天候の影響で悪化しやすく、痛みの再発が起きやすい為注意が必要です。

うつ・不安障害

自律神経の乱れから気分の落ち込みや不安感・焦燥感が強まります。

認知症の周辺症状

徘徊(はいかい)、暴言、暴力などの周辺症状が天候の影響で激しくなることがあります。

このように低気圧時には頭痛やめまいを始め、さまざまな症状があらわれます。

低気圧不調の改善方法

低気圧によって体調不良を訴える人は多く、誰にでも起こり得ます。そのため、症状が出た場合の対処法を知っておくことが大切です。

まず、自宅や会社でもすぐにできる簡単な対処法としては、耳や頭を指でマッサージしたり、ぬるめのお湯でゆっくりお風呂につかることがおすすめです。
耳を優しくマッサージすることで気分が落ち着き、入浴は全身の血行を良くして症状の改善につながります。
着圧ソックスを履くことも効果的です。着圧ソックスは血行を促進し、全身のむくみを和らげる作用があります。
ただし、着圧ソックスを寝ている間ずっと履き続けると逆に頭に血液が溜まり、頭痛を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

市販の薬やサプリメントを活用する方法もあります。低気圧不調に効果的とされる成分を含む薬品が多数販売されているので、自分の症状に合ったものを選ぶといいでしょう。
頭痛対策成分を含む解熱鎮痛剤や、スタミナ対策としてBCAAサプリなどを試してみる価値は大いにあると思います。
根本的な対策として漢方薬も非常に有効です。
代表的な処方として五苓散桂枝茯苓丸当帰芍薬散苓桂朮甘湯などがあげられます。これらの漢方薬は体内の水分バランスを整え血行を促進する効果が高く、低気圧不調によるむくみや頭痛など、原因の根本に近いところに作用します。
漢方薬の使用は、低気圧時における不調対策としては非常に有用です。

低気圧不調の予防方法

低気圧不調は気圧の変化が原因で起きるため、完全に予防することは難しいですが、日頃の生活習慣を改善することで症状を最小限に抑えることができます。
まず重要なのが食事です。朝食をきちんととることが大切です。
朝食を抜いてしまうと血糖値が不安定になり、頭痛などの症状が出やすくなります。バランスの良い食事を心がけましょう。

次に大切なのが睡眠です。睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、気象病の症状を悪化させます。就寝前のスマホやパソコン作業を控え、寝室の温度や湿度を調整するなど、眠りやすい環境をつくることが大切です。

そのほかにも、朝日を浴びて目覚めること、定期的な散歩や運動入浴によるリラクゼーションなどが予防につながります。
気象病対策アプリを利用して気圧変化を事前に把握したうえで、行動を調整することもおすすめです。

これらの生活習慣を通じて自律神経を整え、体のリズムを安定させることが予防の基本です。気圧の変化だけでなく、ストレスも影響するので、仕事とプライベートのバランスを大切にしましょう。

以上、低気圧時の気象病を未然に防ぐためのポイントをまとめました。
症状が出てしまった場合の対処法も大切ですが、日頃の生活習慣から予防を心がけることが大切です。
上手な対策で快適な生活を送っていきましょう。

低気圧時の体調不良に関するよくある質問

Q
低気圧不調の場合何科を受診したらよいですか?
A

神経内科を受診することが適切だと思います。
低気圧不調は自律神経の乱れが関係していることが多く、神経内科では自律神経機能検査などを通じて症状の原因を詳しく調べ、適切な治療を行ってくれます。
また漢方内科も効果的な選択肢です。気象病に対して漢方薬の処方が役立つケースが多いためです。
五苓散当帰芍薬散などの漢方薬は、自律神経のバランスを整えるのに適しています
頭痛外来では、気圧変化に伴う頭痛の診療に力を入れている病院も多いです。頭痛の治療を専門とした指導が受けられます。
いずれにせよ、低気圧不調による体調不良が続く場合は早めに専門医の診断を受けることをおすすめします。重い病気が隠れているケースも稀ではないからです。
記録に残した症状のデータを示しながら受診すると、的確な治療を受けられるでしょう。

 

Q
低気圧不調が女性に多いのはなぜですか?
A

第一に、女性のほうが内耳が敏感であることが影響しています。
内耳は三半規管という器官で気圧の変化を感知していますが、女性の内耳の方が変化に対する反応が大きいようです。
第二に、女性ホルモンの影響が考えられます。
月経周期などに伴う女性ホルモンの変動は自律神経の乱れを引き起こしやすく、気圧の変化に対する体の順応能力を下げている可能性があります。
第三に、寒冷や疲労などのストレスへの抵抗力の違いも関係していると考えられます。
女性の方がストレスに対する体の耐性が低い傾向にあることから、気圧変化と重なるストレスで自律神経失調を起こしやすいのではないでしょうか。
このように生理学的な違いとストレス耐性の違いが、女性のほうが低気圧時の体調不良を訴える割合が高い要因として考えられます。

 

Q
低気圧に注意が必要な時期はありますか?
A

まず台風シーズンです。
台風周辺は非常に低い気圧で、気圧の変動も大きいため、普段あまり症状の出ない人でも低気圧不調を発症しやすくなります。
次に天気の変化の激しい時期です。
天気が崩れる前の2~3日間や、天気が回復するころが気圧の乱高下が起こりやすく、体調不良が出現しがちです。
季節の移り変わりにも注意が必要です。
特に春先は寒暖の差が大きいため、気圧の変化も大きくなりがちです。自律神経の乱れが生じやすい時期といえます。
そのほか、梅雨の長期間にわたる高湿度と気圧の低下も気をつけたいポイントです。
関節痛の悪化などが起きるケースが少なくありません。
このように気圧変動の激しい時季には低気圧不調に注意が必要です。予防や対策を万全にしておきましょう。

まとめ

低気圧が近づくと、多くの人が体調不良を経験します。
この現象は、気圧の変化が身体に及ぼす影響に起因しています。気圧の低下により、体内の酸素や血液の流れに変化が生じ、それが様々な症状を引き起こす可能性があります。
低気圧による不調の症状には、頭痛めまい倦怠感関節の痛みなど様々です。これらの症状は、個人差があるものの、低気圧が近づくと増強する傾向があります。
低気圧不調を改善する方法としては、適切な休息十分な水分摂取軽い運動ストレッチマッサージなどが挙げられます。
また、頭痛や関節痛などの症状に対しては、適切な医師の診断と治療が必要になります。
低気圧不調を予防するためには、体を温かく保つことや適切な栄養摂取、規則的な運動、ストレスを軽減することが重要です。
また、低気圧が近づくことを予測し、早めに対策を取ることも効果的です。
低気圧による体調不良は、一時的なものであり、通常は気圧が安定すると改善されます。しかし、持続的な症状や重篤な不快感を感じる場合は、医師の診断を受ける様にしましょう。
低気圧による不調は、個人差があるため、自身の体調をよく観察し、適切なケアを行うことが大切です。そして、不調が続く場合には専門家の助言を仰ぎ、適切な対処を行うことが重要です。