固定資産税の計算方法とシミュレーション|税を抑えるポイントも解説

家を所有していると、毎年固定資産税が課せられます。物件によっては税額も高額になるので、どれくらい掛かるのかを把握しておくことが大切です。固定資産税がどれくらいになるのかは、自分自身でも簡単に計算することができます。

この記事では、固定資産税の基本や計算方法・適用できる軽減措置など分かりやすく解説していきます。この記事を参考に、固定資産税の税額をシミュレーションしてみましょう。

固定資産税とは

固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課せられる税金です。納付先はそれぞれの自治体である地方税となります。

固定資産税の課税対象となる資産
固定資産税の課税対象となる資産は、大きく次の2種類です。

・土地・家屋
・償却資産
 
・土地・家屋
土地とは、住宅が建設される土地だけではなく、山林や田畑などの農地などが該当します。また、家屋も戸建てやマンションと言った居住用の建物だけでなく、倉庫や工場なども含まれるのです。

このように、おおよそほとんどの不動産が固定資産税の対象となります。

これらの不動産について1月1日時点の所有者が納税義務者となり、毎年4~6月頃に送付される納税通知書で納税することになるのです。固定資産税は、原則毎年4期に分けて納付します。

新築の場合は、1月2日以降に完成していれば翌年から納税が開始されます。中古を購入した場合、1月1日時点の所有者が売主となるケースがほとんどなので、その年の納税義務者は売主です。ただし、年の途中での購入の場合、所有期間に応じで売主と買主で案分するのが一般的でしょう。

固定資産税は不動産によっても異なりますが、年間で10万円を超えることも珍しくないため、固定資産税の納税についても資金計画を立てておくことが大切です。

・償却資産
償却資産とは、事業を経営している人が所有する事業に使用する土地及び家屋以外の資産のことをいいます。事務所であればパソコン、店舗であれば内装や造作、駐車場経営であればアスファルト舗装などが償却資産です。

企業や経営者は、1月1日時点で所有している償却資産を申請すると、6月ごとに納税通知書が送付されるので納税します。

なお、課税標準の額が150万円未満の場合は課税されません。

◆固定資産税の計算方法

不動産を所有する場合、毎年固定資産税が課税されるので、その額を把握しておくことが大切です。税金の計算となると複雑とイメージする方も多いでしょうが、固定資産税の算出は比較的簡単にできます。

ここでは、建物と土地の固定資産税の計算方法を解説していきます。大まかな計算方法は以下の通りです。

1.固定資産税評価額を確認
2.課税標準額を算出
3.建物の固定資産税を算出
4.土地の固定資産税を算出
5.都市計画税を算出

①固定資産税評価額を確認

固定資産税評価額とは、固定資産税の計算の基準となる資産価値を示した価格です。すでに固定資産税を納めている場合、次のようなもので固定資産税評価額を確認できます。

・課税明細書:毎年送付される固定資産税納付書に添付
・固定資産課税台帳の閲覧:自治体の担当課で閲覧可能
・固定資産税評価証明書の入手:固定資産課税台帳の内容の証明を自治体の担当課で入手する
 
また、これから不動産を入手しようと検討している場合は、次の価格が目安となります。

・土地の固定資産税評価額:公示価格の7~8割程
・建物の固定資産税評価額:建築費の5~7割程
 
仮に、3,000万円の新築を購入する場合の内訳が次の場合を計算してみましょう。

・土地の購入額:1,000万円
・建物の建築費:2,000万円
 
上記の場合、それぞれ7割程と仮定すると、土地の固定資産税評価額が700万円、建物が1,400万円となるのです。

②課税標準額を算出

課税標準額とは、税金の計算の基準となる金額のことを言います。固定資産税だけでなく、すべての税金でそれぞれの課税標準額を元に税金が計算されるのです。

ちなみに、固定資産税の場合は、固定資産税課税標準額となります。

固定資産税では、面積や購入年・家の性能などでさまざまな固定資産税評価額の軽減措置が適用できます。代表的な土地と建物の軽減措置として次のような特例が適用できます。

・土地:小規模住宅用地の軽減措置(200㎡以下の部分に対して評価額が1/6)
・建物:新築住宅の軽減措置(戸建ての場合、3年間評価額が1/2になる)
 
適用できる軽減措置には適用条件や期間が定められているので、条件をしっかり確認するようにしましょう。

仮に、①の条件で土地と建物の軽減措置を適用した場合の、課税標準額は次の通りです。

・土地の課税標準額:700万円×1/6=116万6,600円(100円未満切り捨て)
・建物の課税標準額:1,400万円×1/2=700万円


 
③建物の固定資産税を算出

固定資産税の計算方法は次の通りです。

・固定資産税=課税標準額×1.4%(標準課税)

 固定資産税の税率は、国が目安としている税率が1.4%です。ただし、自治体によって設定されるため、1.4%以外の自治体もあります。該当する自治体の課税率について調べたうえで算出するようにしましょう。

固定資産税は土地と建物それぞれに課税されるので、分けて固定資産税算出していきます。

①の条件で算出してみましょう。

・・建物の固定資産税=700万円×1.4%=9万8,000円

④土地の固定資産税を算出

次に土地の固定資産税を①の条件で算出します。

・・土地の固定資産税=116万6,600円×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)

 
よって、固定資産税合計は次の通りです。

・固定資産税=9万8,000円+1万6,300円=11万4,300円

 
上記の場合、約11.4万円の固定資産税が毎年課税されます。

ただし、固定資産税は一度決まった額がずっと続くわけではありません。3年に一度固定資産税評価額は評価替えされます。また、建物は経年劣化の資産価値減少分を補正していくものです。

固定資産税評価額の軽減措置も適用期間が決められているものもあります。固定資産税評価額は、年数によっても異なっていくので長期的なシミュレーションをしてみるとよいでしょう。

⑤都市計画税を算出

固定資産税とともに毎年不動産に課せられる税金に、都市計画税があります。都市計画税は、都市計画区域内の不動産に対して課せられる税金で、固定資産税と一緒に納税します。

都市計画税の計算は次の通りです。

・都市計画税=固定資産税評価額×0.3%

 
都市計画税の税率は自治体によって異なりますが、上限が0.3%と定められています。

また、都市計画税でも軽減措置を適用できるので、事前に調べてみるとよいでしょう。なお、都市計画税は都市計画区域外の不動産の場合は課税されません。

◆固定資産税の計算シミュレーション

ここでは、戸建てとマンションの固定資産税を新築・中古でシミュレーションしてみましょう。

新築戸建ての場合
条件を次のように設定します。

・土地の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
・建物の購入価格:1,500万円(固定資産税評価額:1,050万円)
 
土地は軽減措置で評価額を6分の1,建物は新築住宅の軽減措置で2分の1、税率1.4%で計算していきます。

・土地の固定資産税:1,400万円×1/6×1.4%=3万2,600円(100円未満切り捨て)
・建物の固定遺産税:1,050万円×1/2×1.4%=7万3,500円
 
よって、3万2,600円+7万3,500円=10万6,100円の固定資産税となるのです。

また、同じ3,500万円の新築の内訳を変えて計算してみましょう。条件は以下の通りです。

・土地の購入価格:1,500万円(固定資産税評価額:1,050万円)
・建物の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
 
軽減措置は上記の例と同じです。

・土地の固定資産税:1,050万円×1/6×1.4%=24,500円
・建物の固定資産税:1,400万円×1/2×1.4%=98,000円
 
よって、固定資産税は12万2,500円です。

このように、同じ新築価格でも内訳によって固定資産税が異なるので注意しましょう。

◆新築マンションの場合

次に新築マンションの固定資産税を算出します。条件は次の通りです。

・土地の購入価格:1,000万円(固定資産税評価額:700万円)
・建物の購入価格:3,000万円(固定資産税評価額:2,100万円)
 
軽減措置は戸建て同じ特例が適用できるので、固定資産税は次のようになります。

・土地の固定資産税:700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:2,100万円×1/2×1.4%=14万7,000円
 
よって、16万3,300円の固定資産税がかかります。

また、条件を次のように変えて算出してみましょう。

・土地の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
・建物の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
 
この場合の固定資産税は

・土地の固定資産税:1,400万円×1/6×1.4%=3万2,600円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:1,400万円×1/2×1.4%=9万8,000円
 
よって、この場合は13万600円の固定資産税掛かります。

◆中古戸建ての場合

次に中古戸建の固定資産税を計算してきましょう。

条件を次のようにします。

・築4年
・土地の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
・建物の購入価格:1,500万円(固定資産税評価額:1,050万円)
 
土地については軽減措置が適用できます。しかし、新築住宅の軽減措置は戸建てでは3年間しか適用できないため、軽減措置はできません。ただし、建物は経年劣化分による資産減少分を経年減点補正率で減額できます。

築4年の経年減点補正率を0.67として計算していきましょう。

・土地の固定資産税:1,400万円×1/6×1.4%=3万2,600円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:1,050万円×0.67×1.4%=9万8,490円
 
よって、13万1,090円の固定資産税がかかります。

これは、新築戸建ての同条件でシミュレーションした際の固定資産税10万6,100円に対して大きく増加していることが分かります。

次に、条件を以下に変更して計算していきましょう。

・築20年
・土地の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
・建物の購入価格:1,500万円(固定資産税評価額:1,050万円)
 
土地については築20年でも軽減措置を適用できます。建物は軽減措置が適用できませんが、経年減点補正率が0.26に変わります。この場合の固定資産税は次の通りです。

・土地の固定資産税:1,400万円×1/6×1.4%=3万2,600円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:1,050万円×0.26×1.4%=3万8,220円
 
固定資産税合計は7万820円と新築当初に比較しても大きく減少しています。

このように、固定資産税は年数の経過でも大きく変化していくので、資産計画の参考にしてください。


◆中古マンションの場合

最後に、中古マンションの固定資産税を算出します。条件は以下の通りです。

・築4年
・土地の購入価格:2,000万円(固定資産税評価額:1,400万円)
・建物の購入価格:1,500万円(固定資産税評価額:1,050万円)
 
土地については軽減措置を適用できます。また、マンションの場合は新築住宅の軽減措置を5年間適用できるので、4年目でも評価額を2分の1に減額で切るのです。

この場合の固定資産税は次のようになります。

・土地の固定資産税:1,400万円×1/6×1.4%=3万2,600円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:1,050万円×0.67×1/2×1.4%=4万9,200円(100円未満切り捨て)
 
固定資産税合計は8万1,845円と戸建て4年目よりも大きく減少できるのです。

次の条件を以下のように変更して算出します。

・築10年
・土地の購入価格:1,000万円(固定資産税評価額:700万円)
・建物の購入価格:3,000万円(固定資産税評価額:2,100万円)
 
築10年目の場合、土地の軽減措置は適用できますが新築住宅の軽減措置は適用できません。ただし、経年減点補正率0.50を考慮して計算していきましょう。

・土地の固定資産税:700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
・建物の固定資産税:2,100万円×0.50×1.4%=14万7,000円
 
よって、16万3,300円の固定資産税がかかります。これは、新築マンションでシミュレーションした固定資産税と同額です。

軽減措置を適用できなくなっても築年数が経過することで、適用時と同じくらいの固定資産税になることが分かります。ただし、築年数が浅い段階で軽減措置を適用できないと固定資産税も高額になる可能性があるので、注意しましょう。

◆固定資産税のシミュレーションをする際の注意点

固定資産税をシミュレーションする際に抑えておきたい注意点として、次のようなことが挙げられます。

土地と建物は別で計算する
固定資産税は土地と建物それぞれに課税されるものです。
土地は経年劣化で資産価値が目減りしないという特徴があり、年数が経過したからと言って固定資産税評価額が下がることはありません。

対して、建物は経年劣化による資産価値の減少を考慮する必要があります。
ただし、土地の場合も3年の1度の評価替えのタイミングで評価額が変動する可能性がある点には注意しましょう。

マンションと戸建ての違いに注意
マンションと戸建てでは適用できる軽減措置の条件や期間が異なります。事前に適用できるかどうかを調べたうえでシミュレーションするようにしましょう。
特に、適用期間が終了すると固定資産税の負担が大きく増加するため、いつまで適用できるのかは把握しておくことが大切です。

マンションの場合は、土地の面積は区分所有者の所有比率で分担し、区分所有分の固定資産税を支払うことになります。一般的には、マンションの土地の面積は戸建てよりも狭くなることから土地にかかる固定資産税を安く抑えやすくなるでしょう。

特定空き家に注意
特定空家とは、自治体が指定する危険性の高い空き家のことをいいます。
土地の固定資産税は、居住用の建物が建てられていることで軽減措置を適用でき大幅に減額可能です。空き家であっても居住用の建物と見なされ軽減措置の対象となります。

しかし、特定空き家に指定されると軽減措置の対象外となってしまい、本来の高い固定資産税を支払う必要があるのです。

「倒壊などの危険性が高い」「不衛生」などといった理由で特定空き家に指定されます。
相続で実家を所有したけど誰も住んでいないといったケースで、空き家を適切に管理していないと特定空き家に指定される可能性が高いので注意しましょう。

◆固定資産税を抑えるためのポイント

固定資産税は、さまざまな軽減措置を適用することで税額を抑えることが可能です。最後に、固定資産税を抑えるポイントとして、次の3つを解説します。

・新築住宅に対する軽減措置を受ける
・住宅用地の特例を適用する
・省エネリフォームを行う


◆新築住宅に対する軽減措置を受ける

建物に対する軽減措置として、新築住宅の軽減措置があります。2025年3月31日までに新築する場合、次の割合で固定資産税評価額を軽減可能です。

建物の種類 軽減率 適用期間
戸建て 2分の1 3年間
マンション 2分の1 5年間
長期優良住宅 2分の1 戸建て5年/マンション7年
 
戸建てでは3年間固定資産税評価額を2分の1,マンションでは5年間固定資産税評価額を2分の1に軽減できます。さらに、国が定める長期優良住宅の基準を満たし認定されることで、適用期間を延長することが可能です。

新築住宅に対する軽減措置では、床面積が50㎡以上280㎡以下などの適用条件もあるので、事前に適用できるか確認するようにしましょう、

◆住宅用地の特例を適用する

土地は居住用の建物が建っていることで、次の軽減措置を適用できます。

面積 軽減率
小規模住宅用地 200㎡以下の部分 6分の1
一般住宅用地 200㎡超えの部分 3分の1
 
この軽減措置を適用することで、土地の面積200㎡以下の部分の固定資産税は6分の1に、それ以上の部分は3分の1に軽減できます。

居住用の建物であれば、自宅以外でも賃貸用マンションやアパートも適用可能です。ただし、駐車場など居住用の建物が建っていない土地や適用できません。

◆省エネリフォームを行う

省エネリフォームを行うことで、建物の固定資産税が120㎡以下の部分について3分の1に減額できます。この特例を適用するには、窓の断熱改修工事を含む床や天井・壁などの改修工事を行う必要があります。また、改修工事の費用についても規定があるので自治体の適用条件を確認するようにしましょう。

建物の改修工事で適用できる軽減措置には、他にも耐震リフォームやバリアフリーリフォームもあります。省エネリフォームとバリアフリーリフォームは併用できるため、大きく税額を抑えられる可能性もあります。ただし、適用には工事を実施する必要があるだけでなく、軽減措置の申請も必要になる点は注意しましょう。

◆まとめ

この記事では、固定資産税の計算方法や注意点をお伝えしました。固定資産税は、家の購入後毎年掛かってくる費用のため、税額を把握して資金計画を立てておくことが重要です。軽減措置を適用することで税額を抑えることもできるので、この記事を参考にまずはシミュレーションしてみることをおすすめします。

また、固定資産税の負担を抑えたいなら、相続などで得た活用しない家は売却してしまうのも一つの手です。

 

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