2003年以降に建てられた住宅に、必ず設置されている24時間換気システム。実は法律上のルールによって設置が義務づけられている設備で、集合住宅でも一戸建てでも、比較的築浅の物件なら当たり前に取り付けられています。
ではこの24時間換気システムがないと、実際にどのような影響があるのでしょうか?24時間換気システムの具体的な役割について解説。稼働させておくべき理由や、想定されるデメリットと対処法、お手入れ方法などの詳しい取り扱い方もご紹介します。
24時間換気システムとは?
24時間換気システムとは、建物内の空気を自動的に循環させる設備です。室内に新鮮な外気を取り込み、そして部屋のなかに溜まった淀んだ空気を排出する流れを、機械によってつくり出しています。ちなみにマンションの居室で見られる通気口は、24時間換気システムの一部です。
特に近年は省エネの観点から気密性の高い建築技術が普及し、意識的に窓を開けて空気の入れ換えをしないと、換気がされない建物が増えてきました。そこで常にきれいな空気を保って、健康に過ごせる空間を維持するために、2003年7月より24時間換気システムを設置する「改正建築基準法」が施行。住宅をはじめ、居室を含む建物すべてに、24時間換気システムを取り付けることが法的に義務化されました。また、この改正建築基準法では、1時間で室内の空気を半分以上入れ換えることが求められています。
24時間換気システムの効果
24時間換気システムがあることで、より快適な居住空間を保てるのが大きなメリットです。具体的には、大きく分けて次の3つの効果に期待できます。
吸気と排気によって室内の空気を入れ替える
換気ができないと、室内に舞っているハウスダストが溜まってしまうなど、どんどん部屋の中の空気が淀んでしまいます。そこで24時間換気システムによって、窓を開けなくても空気が循環し、いつもきれいな空気に維持することが可能。寒い冬で窓を閉め切っていても、24時間換気システムがあれば、常に空気の入れ換えができます。
湿気をコントロールしてカビ・結露を抑制する
24時間換気システムで空気の入れ換えをすることで、余分な湿気を室外に排出できるのもメリットです。空気が循環しなければ、当然ながら室内で発生した湿気も溜まってしまい、カビや結露を引き起こす原因にもなります。24時間換気システムは、衛生的な居住空間を保つのに大きな役割を果たしています。
フィルターを活用して汚染物質の室内侵入を防ぐ
もちろん窓を開けて自然換気をしても、空気の入れ換えはできます。とはいえ屋外の空気中には、砂埃などのごみや、季節によっては花粉・黄砂・PM2.5といった健康に影響する物質も飛んでいます。そこで24時間換気システムのように、フィルターを通して外気を取り込むことで、汚染物質の侵入を防ぎながら新鮮な空気を室内に入れることが可能に。
あらかじめ空気をきれいにしてから循環させる意味でも、24時間換気システムが効果的です。
24時間換気システムを止めるとどうなる?
24時間換気システムを止めたままにすると、気密性が高い住宅の場合、うまく換気ができなくなります。そうなると室内では、人間の呼吸で酸素が減って二酸化炭素が溜まってしまったり、ハウスダストなどの不純物が排出されなかったり、といった影響が出ます。さらに先ほども出てきたように湿気がこもるので、その水分によって、住宅の基礎部分となっている資材の劣化を進めてしまうことも。建物を長く維持させるためにも、24時間換気システムはできる限り止めないのが原則です。
また新築住宅では、建築部材などに含まれる化学物質が室内に発散しやすく、換気しないと健康被害が起きる危険性も。この化学物質がもとになって、めまいや頭痛などの症状が表れる、「シックハウス症候群」になる可能性が想定されます。24時間換気システムにより、空気を循環し有害な不純物を屋外に排出させることで、室内の安全を守ることにもつながります。
24時間換気システムの種類
24時間換気システムは、建物ごとの特性により、主に3種類の方法で使い分けがされています。ではそれぞれの種類について、どのような特徴があるのか見ていきましょう。
第1種換気方式
第1種換気方式は、外気を取り込むのも室内の空気を排出するのも、すべて換気扇などの機械でおこなう24時間換気システムです。いわば強制的に給排気をするので、換気効率が非常に高いのが特徴。さらに空気を取り込むファンには、外気を調整して室内に入れる「熱交換器」を取り付けることもでき、室内の温度を保ちながら換気が可能に。人の出入りが多い施設や、省エネ性能が高い住宅などでよく使われている方式です。
<第1種換気方式のメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
空気を確実に循環できる | 設置する初期費用が高い |
換気状態を保つことができる | 稼働分の電気代がかかる |
室温が変わりにくい | ダクト清掃やフィルター交換費などのメンテナンスの負担が大きい |
第2種換気方式
第2種換気方式は、機械にて外気を取り込み、室内の空気は自然に排出させる24時間換気システムです。外の空気を入れる力を強めることで、室内の気圧を高くし、汚れた外気を取り込みにくくできる特徴があります。例えばドアを開けた時、その開口部分から余計な外気が入ってこないため、病院や食品工場などの万全の衛生環境が求められる施設で使われる方式です。
一方で湿気がたまりやすく、一般的な住宅ではあまり取り入れられない傾向にあります。
<第2種換気方式のメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
汚れた空気を取り込みにくい | 結露が起こりやすく、湿気がこもる |
クリーンルームなど特殊な場所でも利用できる | 外気の影響を受けやすい |
第3種換気方式
第3種換気方式は、外気を自然の空気の流れで取り込み、室内からの排気を機械でおこなう24換気システムです。強制的に室内の空気をどんどん排出させるため、湿気がこもりにくいのが特徴。なおかつ給気には機械を使わないので、初期費用やランニングコストも抑えることができ、住宅でよく見られる方式です。
また一般的には、第3種方式の排気口はにおいや湿気がたまりやすい水場に設置されており、ここから汚れた空気を押し出すことで快適さが守られやすい効果もあります。
<第3種換気方式のメリット・デメリット>
メリット | デメリット |
---|---|
室内に空気が溜まりにくい | 全室に吸気口が必要 |
結露しにくい | 室温が外気に影響される |
コストが低い | 密閉性のない建物に不向き |
すき間が多い場合、気密性の低い住宅では空気の流れができにくく、第3種換気方式があまり適していない場合もあります。とはいえ先ほども出てきたように、マンションなどの一般住宅で使われやすく、広く普及しているのが第3種換気方式です。
24時間換気システムと換気扇の違い
24時間換気システムは、常に稼働しながら家全体の空気を循環させて、徐々に入れ換えをする仕組みです。一方で換気扇は、部分的に集中して空気の入れ換えをするもので、いわば強いパワーで一気に給排気をする目的があります。火を使うキッチンで、ファンを回して空気を循環させるのが換気扇です。
24時間換気システムは、給排気をする通気口や機械のファンも含めた総称で、常時換気をする設備全体を指します。
24時間換気システムのデメリットと対策
24時間換気システムを稼働させることで、外の空気が入ってくるため、季節によっては不便に思うこともあるかもしれません。特に住宅で使われやすい第3種換気方式では、外気の影響を受けやすい一面もあります。この章では24時間換気システムで考えられる注意点と、その対処法をご紹介します。
室内の温度が外気に影響されることがある(暑い、寒い)
前述にもあるように第3種換気方式では、外気の取り込みには機械を使わないため、冷気も熱風もそのまま室内に入ってきます。気温の厳しい冬や夏には室温への影響を受けやすく、冷暖房が効きにくいと感じる可能性も。空気が入り込む通気口は開けたままで、24時間換気システムも常時稼働させておくのが基本ですが、どうしても気温が気になる際には一時的に給気させないのも一つの方法です。
長時間止めてしまうと、空気がこもってしまうので危険ですが、短時間であればさほど影響はありません。特に第3種換気方式では、外気の入り方を調整しながら利用するのがおすすめです。
虫や花粉が入ってくることがある
外気を取り込む通気口には、基本はフィルターが付いているため、ある程度のごみやちりなどはブロックされます。ただしフィルターの目が粗いと、前述にもあるような花粉・黄砂・PM2.5といった、小さな粒子の物質は通してしまう可能性も。こうした汚染物質をしっかりと防ぎたいのであれば、フィルターをより目の細かい高性能タイプに変える・空気清浄機を通気口付近に設置するなどの対策をしてみましょう。
また通気口から虫が侵入することもあります。虫が入ってくる場合には、フィルターが破れているケースもあるので一度確認してみましょう。虫が気になる際には、防虫網を取り付けたり防虫スプレーをしたりすると、虫除けができます。
稼働音がする
24時間365日絶えず動いているので、稼働音が心配な方もいるかもしれませんが、音はほぼわからない程度です。エアコンなどの家電を使っているのとあまり変わらないくらいで、生活上でストレスになるほどの大きな音は出ません。もし気になるくらいの音がする場合には、24時間換気システムのどこかに汚れが溜まり、機器の動作が悪くなっている可能性や、不具合による異音のケースが考えられるので、一度メンテナンスしてみましょう。
もしくは24時間換気システムの風量が強くなりすぎていて、必要以上に大きく稼働している場合もあります。このケースであれば、風量の設定を見直すことで解決できます。
24時間換気システムのメンテナンス方法
先ほどもあったような不具合による異音や、汚れた空気の侵入を防ぐためには、こまめなメンテナンスが欠かせません。そこで24時間換気システムの具体的なお手入れ方法も、見ていきましょう。
メンテナンスの際の注意点
まず24時間換気システムの掃除をする前には、必ず電源オフにして稼働を止めるようにしましょう。動いたままパーツを触ってしまうのは危険ですし、何かの拍子に壊してしまう可能性があります。また製品によって、取り扱い方には違いがあるので、あらかじめ説明書を確認してから作業をはじめましょう。
そしてお手入れが終わったあとには、フィルターや通気口を十分に乾燥させてください。濡れたままにしてしまうと、そこからカビが発生して室内に胞子を取り込んでしまうことが想定されるので、しっかりと乾かします。
フィルターを交換する
通気口のフィルターが汚れていると、そこからごみなどを一緒に取りこんでしまったり、外気を通さなくなってしまったりするケースがあります。そのため通気口のフィルターは、3カ月に1回の季節ごとにメンテナンスしていくのがベストです。
フィルターは大きく分けて、洗って何回か使うタイプと、定期的に交換する使い捨てタイプの2種類があります。とはいえ洗えるフィルターも、使用しているうちに破れたり、穴が開いたりすると使えなくなってしまいます。少し劣化が進んでいるようなら、あらかじめ新品を用意しておきましょう。
【手順】
- STEP 1吸気口のカバーを外す
- STEP 2フィルターを取り出す
- STEP 3フィルターの汚れ・ほこりを取り除く
- STEP 4フィルターを水洗いし、乾燥させる
- STEP 5フィルターとカバーを取り付ける
フィルターを取り外したら、小さなほうきや歯ブラシなどを使って、大きな汚れはある程度落としておきます。そして水洗いをしてきれいにしたら、よく乾燥させて水気をしっかりと切っておきましょう。残った水分はカビの原因になるので、きちんと乾かしてから取り付けます。
通気口を掃除する
フィルターと同様に、通気口にも汚れが溜まるので掃除をしましょう。基本的に通気口は、拭き掃除できれいにしていきます。
【手順】
- STEP 1カバーとフィルターを取り出す
- STEP 2内部のほこりを取り除く
※掃除機で吸い、雑巾や歯ブラシを用いて汚れを落とす
通気口から汚れを取り除けたら、フィルターと同じようにしっかりと乾燥。雑巾などで拭き取る際には、なるべく水気を切ったものを使用し、その後きちんと乾かします。
24時間換気システムについてよくある質問
では24時間換気システムの役割や仕組みなどで、よくある疑問について、以下にまとめました。
24時間換気システムは止めてはいけない?
24時間換気システムは、密閉度の高い建物に対応するために設置されるもので、常に稼働させておく必要があります。24時間換気システムを止めてしまうと、空気が循環せずシックハウス症候群などの健康被害を引き起こしたり、湿気がこもって住宅の基礎部分を劣化させたりする可能性も。よほどのことがない限りは、24時間換気システムは停止させないのが基本です。
24時間換気システムは設置しないといけない?
24時間換気システムは、2003年7月施行の改正建築基準法によって、設置が義務付けられました。人が出入りする建物の新築時には取り付けが必須で、もちろん個人の一戸建ても対象になっています。これからマイホームを新築するのであれば、24時間換気システムは必ず設置されます。
毎月の電気代はどのくらい?
常時絶えずに稼働させておくとなれば、電気代が気になるかもしれませんが、決して大きく影響するほどではありません。常に動かしておいても、24時間換気システムに使う電気代は月々500円もかからない程度。むしろ頻繁に電源をオンオフするほうが、電力の負荷がかかりやすく電気代もかさみやすいため、付けっぱなしにしておいたほうがお得です。
まとめ
24時間換気システムは、常に稼働させておくことで、部屋の空気をいつでも衛生的に保たせる設備です。寒い冬やエアコンで部屋を冷やす夏など、窓を閉め切ることも多いですが、24時間換気システムがあることで空気循環をさせることが可能。健康的な生活はもちろん、住まいの耐久性を守るためにも欠かせない存在です。また新鮮な外気を取り込んで循環させる仕組みだからこそ、外からの空気を通す24時間換気システムは、定期的に掃除してメンテナンスすることも大切。
ぜひ本記事を参考に、日々のお手入れもこまめにしていきましょう。
不動産売却・購入はグリーンハウジングにお任せください!!
受付時間:10:00~19:00 |